指導例:2021年①:中学3年生(高校受験)

去年は受験生が多かったのですが、今年は中学受験1人、高校受験1人の2人だけになっています。残りの生徒は、学校や塾の授業のフォローです。この記事では高校受験生の木村君(仮名)の指導状況について書きます。

木村君は、元々中学受験の直前にご依頼を頂いた生徒だったのですが、中学受験向けの塾の勉強が上手くこなせていませんでした。ご両親が「これを解いておきなさい」と提示した問題を機械的に解くだけになっていて、自主性が全くなく、考えて解くことをしていませんでした。そのために同じ問題を何度も間違えたり、少しひねった問題になると対応できませんでした。勉強に対するやる気・熱意は感じられず、ゲーム・アニメ・動画以外には無気力でした。

ご両親もそうした状況を理解されており、「手応えのある勉強」「自主的な勉強」「考える勉強」に軌道修正したいとの思いから、僕に依頼をして頂きました。時間がなかったこともあり、中学受験向けの勉強はせず、最初は「理解しないまま問題を解かないで!」と言い続けていました。

中学受験前の6年生の2月から、僕との授業時間には英語に注力しました。中学以降の勉強では圧倒的に英語が重要です。大学受験では文系でも理系でも英語は避けられないですし、英語は一度苦手意識を持つとずっと引きずってしまうからです。数学に関しては、代数の勉強を中心にしました。中1の幾何は中学受験以上の内容はあまり出てこないからです。

中学1,2年にはやる気の落ちた時期もあったのですが、現在中学3年生になって受験が近付くと、見違えるように自分から勉強してくれるようになりました。ベイタウンでは周りの友人のレベルが比較的高いということもあり、自然と意識が高まります。もちろん勉強しない生徒達に引っ張られて、悪い影響を受けてしまう子もいるのですが。

木村君は、最近「なぜ僕は中学受験の時にもっとやる気を出さなかったのだろう」「あの頃はやらされていただけだった」と言うようになりました。それに気付いただけでも中学受験をした価値があったのかなと考えています。高校受験が近付くこの時期には、学校のテストや塾のテストや外部模試などが連続して、それぞれの出題範囲や重要度が異なることもあり、何から手をつけてよいか分からなくなりがちなのですが、木村君は自分なりの基準で優先順位を付けて、出来ないことには折り合いを付けて、落ち着いて取り組んでいます。もちろん誰しも苦手な教科や範囲にはなかなか手を付けられないものなので、そうした所を僕が指摘しながら進めています。

現在、僕との授業では英語と数学を中心に勉強しています。本人が申し出て、理科や国文法や、時には学校の音楽や情報処理などを教えることもあります。塾での成績も上がってきて、それがやる気につながっているようです。よい循環ですね。

僕も20年以上家庭教師をしてきて、やはり勉強は「長期的視野に立った勉強習慣」に尽きると感じるようになりました。勉強習慣はつまり生活習慣でもあります。家庭教師は当然短期的な結果を求められるものでもありますが、僕が携わることによって、勉強習慣や学問的な態度が改善されるのを見るのは嬉しいです。

家庭教師と個別指導の違い

「このままではうちの子の勉強がマズイ」と感じた場合、ご両親はどのような対策を取れるでしょうか。

ベイタウンで一番多いのは「中学受験直前に実力が足りない」です。ついで「中学受験用の塾についていけない(分からないところが溜まっていってしまう)」ですね。

その他には中学・高校での定期テスト対策や大学受験などがありますが、どんな年代の子供であっても、本人の勉強だけに任せていては塾(学校)の進度についていくのが不安だという場合、ご両親が取りうる選択肢としては主に5つあると思います。

  1. お説教で「もっと勉強しなさい」と言う
  2. 親が教える
  3. 塾の質問教室に行く
  4. 個別指導教室に通う
  5. 家庭教師を雇う

1から5へ進むにつれて、お金がかかり、ご両親にも覚悟も必要になります。コストを重視するならば、低い段階で済ませ、高い段階への延焼を防ぎたいものです。

 

1の「お説教」はほぼ効果がない

もう十分にお説教はしているでしょう。何度言っても、より強く言っても、悪影響こそあれ、成績が改善することはありません。ご両親が時間・覚悟・お金・手間をかけて、取り組む姿勢を見せることがなければ、何も変わりません。

 

2の「親が教える」は最高だが、難しい

「親が教える」は、最高のオプションです。子供は親が出来ることは自分も出来るようになる・ならねばならないと信じます。自然と勉強への意識も高まります。

ただしご両親が教えるのは現実的ではない場合があります。仕事の合間を縫って親が教えようとしても、子供が言うことを聞かなかったり、覚えが悪ければイライラしてしまいます。また単純に親が問題を解けないという場合、あるいは解けたとしても良い教え方が分からないという場合が多いです。加えて、親の前で長時間座って勉強できる子供はあまりいないでしょう。親が子供を怒鳴りつけたりして、以後「パパ・ママとの勉強は嫌だ」と拒否されてしまうこともあります。

ご両親に十分な時間的・精神的余裕があれば良いのですが、現実的には難しいでしょう。

 

3の「塾の質問教室に行く」はアクティブな行為だが、時間効率が悪い

塾に通っている生徒にとっては、「塾の質問教室に行く」は最初に試してみるオプションです。良い所は

  • 塾なのである程度の監視が働いている(遊んだりしない・任せて安心)
  • 予め質問箇所を整理しておくこと自体が良い勉強になる
  • 質問しにいくこと自体がアクティブな行動なのでやる気につながる
  • 塾の講師がいるのでしっかりと答えてもらえる

悪い所は

  • 他の生徒が多いと1つか2つ質問して終わりになってしまう(時間をかけて塾に行っても実際に教えてもらうのは10分程度)
  • 自分の番を待っている間に集中して勉強していない場合が多い
  • 塾で個別に教わることを嫌がる生徒がいる(先生に怒られるのが嫌など)

分からない所が1個か2個で、生徒が自分で質問を整理して臨めるのであれば、最高の選択肢です。質問教室の混み具合や担当の先生のクオリティに左右されるので、ギャンブル的要素もあります。

 

4の「個別指導」は個人的に一番お勧めできない

個別指導を謳っていても、先生1人に生徒2人というのは、一番危険な指導形式だと思っています。僕自身、学生時代に個別指導でアルバイトしていたこともありますし、家庭教師として兄弟2人を同時に教えたこともありますが、これは一番成果が上がりにくい勉強方法です。

長所から言うと

  • 家庭教師よりは安価
  • 質問教室よりは多く教えてもらえる

短所は

  • 先生の質が低い。これが一番です。これは個別指導にいる先生達の人間性に問題があるのではなく、単純に個別指導の構造上、先生に対する報酬が低いからです。ご家庭の払う報酬が、施設の運営費や運営者に分配されるために、実際に教える先生にはあまり支払われません。報酬が低い所に人材は集まりません。結果として、室長以外はアルバイトあるいは学力の低い先生が多くなります。子供に対してどう教えるのが分からず、自分の解き方を押し付けて、生徒が「?」となる場合が多いです。また先生自体の学力が足りず、問題が解けない場合すらあります。塾の先生やプロの家庭教師に比べ、そもそもの学力・経験が劣るうえに、2人を同時に見ているので、ほとんど「監視員」にしかならないことがあります。
  • 教師が指導に集中できない。僕も経験がありますが、同時に2人の生徒を見るのは、ものすごく疲れるんです。生徒側から何を質問されるか分からない状況で、問題を即座に解いて、分かりやすく指導すると言うのは、スピード勝負ですし、ものすごく集中力がいるんですね。1人が限界なんです。2人同時の個別指導では待たせる方の生徒にもある程度の指示を与えなければならない、指導報告書も時間内に書かねばならない、2人に教える内容が全然違う、ということがあり、教えることに集中できないんですね。
  • 生徒が「勉強しているフリをする癖」を身につけてしまう。これはその後の生徒の勉強態度に影響を及ぼす大問題です。2人同時の授業で、待っている方の生徒は大体ボーッとしています。先生がもう片方の生徒に教えるのをぼんやり聞きながら、先生に怒られない程度にノートに何か書いて、勉強疲れを癒しています。待っている間に自分で進められるところを自主的に進められればいいんですが、『勉強を緩やかに監視されている』『せっかく自分の勉強に集中してもいつ自分の番が回ってきて中断されるか分からない』『すぐそこに先生がいるのに質問がすぐできない』という状況が、勉強の自立を妨げるのにぴったりの環境なんです。
  • 時間効率が悪い。単純に半分。実際はそれ以下の時間しか身についていないはずです。

悪いことをたくさん書きましたが、僕自身の経験を踏まえた本音です。ただし1対1の個別指導で、先生のクオリティが高ければ、何の問題ありません。個別指導でも時間帯によっては1対1にしてもらえることもありますし、室長は能力が高い場合が多いので、室長に見てもらえるのであれば問題ないでしょう。

コストを抑えつつ、そこそこの理解度(成果)でいいので、決まった時間生徒を預かってもらいたい、というニーズがハマれば、2対1の個別指導も良いでしょう。

 

5の「家庭教師」も万能でない

悪い所は

  • 価格が高い。これは大問題です。塾や学費に加えて、家庭教師の料金まで払うのは大変です。これは家庭教師が暴利を貪っているわけではなく、高学歴の専門家を拘束する時間(2時間の指導で移動時間含め約4時間の拘束・かつ平日は1日2人程度しか教えられない)を計算してみると、妥当な値段なのですが、だとしてもほとんどのご家庭からすれば異常に高いことには変わりありません。
  • 生徒の自立が損なわれる場合がある。塾の質問教室に行く場合は、問題を自分で解いてみて、疑問点を整理してから行くはずですが、家庭教師の場合は「大体この辺りが分からないから何とかして!」という感覚でいることが多いです。ご両親も「先生に任せておけば大丈夫」と安心してしまう場合があります。ですが、勉強は自主性が一番大切です。先生に来てもらうだけで満足せずに、どうすれば一番先生を生かせるのか、工夫する必要があります。

良い所は

  • 1対1で、集中して、その子に合った勉強が出来るということ。
  • 疑問点を解決するのが早い。早いということは、できる量が多いということです。

疑問点を解決するのに手っ取り早く効率が良いですが、値段が高いということですね。どうすれば一番効果が出るのか考えて、生徒の自立性を損なわないように利用すべきだと思います。

 

結論:個別指導VS家庭教師

結局は、生徒との相性や、担当の教師のレベル次第ですが、一般に2対1の個別指導はオススメできません。上記リストの1~3までで何とか頑張って、それでも問題が解決しないのであれば、個別指導の半分の時間で良いので、家庭教師に頼んだ方が良いと思います。

個別指導に行って半分勉強して、半分ボーッとしているくらいならば、家庭教師で集中して、余った時間は読書するなり、外で遊んだ方がずっと健康的です。

 

いかがでしょうか。自分が家庭教師なので贔屓目になっている部分もあると思いますが、宣伝のつもりでなく正直な考えを書いたつもりです。

どの形式も一長一短がありますが、子供の様子をよく見て、ご両親がバランスのよい判断をしてあげることが大切だと思います。