今年は大学入試の生徒が3人いる年になりました。
大学入試指導で難しいのは、大学生は「本来自分で勉強できるはずだ」という思い込みが本人にもご両親にもある所です。確かに自分で勉強をしないと伸びない年齢であるのは間違いありません。にもかかわらず、成績が伸び悩み、受験の方向性に迷いを感じる生徒が多いのは、「本来」できるはずの「自分で勉強」するということが実際はできないからです。
最近の高校生や予備校生は受験情報もSNSで収集します。良い問題集や今やらねばならない勉強についても、ぼんやりと分かっています。問題なのは、それに自信を持つことと、地道な勉強を半年〜1年というスパンで継続できないことです。
今年の生徒は全員英語(と国語)を教えていましたが、ある程度以上の学校(いわゆるMARCH以上)で合否を分けるのは単語力です。
もちろん英単語こそ、「自分で勉強」できることですし、「自分で勉強」しないと覚えられません。ですが、毎週範囲を指定し、ある程度のプレッシャーを感じながら小テストを受ける、というのを1年続けるというのは難しいことです。英単語が課題だと何年も言いながら、継続的に努力せず、「できない。どうしよう」「よい単語帳はないか」などと悩み続けている生徒がほとんどです。
英文法や長文読解、リスニングについても全く同じことが言えます。どれも定期的に決まった量をこなすことが大切なのですが、継続的に努力できなかったり、最初から難しいことをやったり、解決できない問題にぶつかって嫌気がさして挫折しがちです。特にリスニングは毎日30分程度英語を聴き続けることが重要ですが、手を付けるハードルが高く、実際にできている生徒はあまりいません。
結局、「本来」「自分でできる勉強」を、長いスパンで管理・実行できている高校生はほとんどいません。大学受験の家庭教師は、1つ1つの問題の解説はもちろんですが、勉強内容全体をプロデュースして並走してサポートすることが大切だと思っています。これは大人でも全く同じで、例えばダイエットや筋トレなどで、やるべきことは分かっていても案外一人では継続できないもので、トレーナーに依頼することで捗ることがあります。
以下は今年の生徒3人の指導内容になります。
今年法政大学・学習院・國學院・日本大学などに合格したA君は、小学6年生から指導していました。全部で7年に渡って指導したことになります。途中でオンラインゲームに嵌ったり、学校が嫌になってしまったりして、必要な勉強内容に1年分の穴が空いてしまいました。高校3年生になって、一念発起して本腰を入れて勉強するようになりました。
通っていた塾の勧めに応じてたくさんの映像授業講座を取ろうとしていたのですが、僕からはとにかく口座数を減らす・基礎からやるということを勧めました。塾の映像授業は有名講師が担当しており、「楽しく」「分かりやすい」です。だからこそエンタメ感覚で多く受講できますし、授業を受けただけで分かった気になり、たくさん勉強した気になってしまいます。多くの塾でその欠点を補うために小テストを課したり、アプリで達成度を確認したりしていますが、クオリティに疑問のあるものばかりです。ちゃんとした講師が校舎におらず、大学生のチューターに質問できるシステムになっていることが多いですが、やはり素人といった指導内容になっています。
僕は、中学受験でも大学受験でも塾は行った方が良いという考えですが、自分の勉強時間を確保し、効率的な勉強法を確立することが第一だと思っています。
A君は僕との授業は週3回で国語と英語を勉強しました。国語は古文単語、英語は英単語を徹底的にやりました。古文単語はほぼ0から、英単語は中学レベルも怪しかったのですが、毎回100単語ほどテストし、できなかったものは復習することで、最後には古文単語はコンプリート、英語は英検準一級レベルに到達しました。本来、読解力や思考力が優れている生徒なので、単語ができることで、文法が曖昧でも選択問題ならほとんど正解できるようになりました。
英語長文・古文の読解も毎回一文を読むようにしました。文法・文構造が曖昧なまま、全体の意味から予測するような解き方が多かったのですが、「テスト本番はそれでもよいが、勉強方法としては意味がない」と伝え、最初は時間がかかってもよいから、曖昧な部分を残さないように指導しました。
古文はやはり覚える内容が少なく、早めに合格点が取れるようになったので、英語だけで週3の指導に移行しました。英語も最初は関係代名詞のかかり方や並立関係などが全く見えていなかったのですが、徐々に分析的に読めるようになり、共通テストも9割ほど取れました。
明治大学に合格したB君は、小学6年生から不定期に指導していた生徒でした。中学受験である程度の難関中に進学し、中高では部活を頑張っていたので、定期テストなどで苦戦しがちでした。どんな学校でも、学校のカリキュラムを大切にして、真ん中以上の成績でいることが大切だと思っています。
部活中心の生活を送っていたB君は、高校3年生に入るまで、大学受験をリアルに考えられないようでした。本当に大学は必要か、勉強ばかりはカッコ悪い、自分は(いわゆる)Fラン大学にしかいけないのではないか、といったモヤモヤの中にいるようでした。
僕が伝えたのは、「今の世の中でも良い大学に行くことには大きな意味がある」「部活をいくら頑張ってもプロにならない限りは食べていくことはできない(精神的な糧にはなるかもしれないが)」という現実的な話でした。また僕はB君の能力の高さを知っていたので、「十分に難関校に合格できる」ということも伝えました。
慶応大学に合格したC君は浪人生でした。C君も英語を指導しました。C君は悩みがはっきり2点に絞られていました。「単語が難しく、予測して補っても、その予測が当たっている場合と間違っている場合があって安定しない」「解答時間が足りない」という2点です。
C君に指導したのは、単語をもっと覚えるようにということと、リアルな英文に触れなさいということでした。早慶レベルになると、受験用に作られた(単語のレベルを高校で習うものに限定した)問題ではなく、実際にネイティブが読む文章が出題されます。そうした問題を普段から読むことが肝心で、CNNなどのニュースで時事やサイエンスの記事を一緒に読みました。そしてどんなに難しい英単語であっても、出てきたものは一般的にネイティブが知っていると思われている単語なのだから、全て覚えなさいと伝えました。実際難関校の英単語は英単語帳のレベルを超えています。もちろんB君は基本の文法と英単語が完成していたので、それを踏まえての指導でした。
英単語を予測しながら読むと、分からない単語が出てくるたびに前後の文脈を読み直す必要が出てきます。読みの流れが断ち切られ、文章全体の論旨が整理しにくくなりますし、時間がかかることで、設問を解く頃には内容を忘れているといった悪影響が出ます。専門用語以外の単語を全て知っているというのが最適解であるのは言うまでもありません。
リアルなネイティブの文章は文構造が複雑で、ある程度の背景理解が必要になることがあるので、一人で読み進めるのはハードルが高いのですが、一緒に読むことで怖さがなくなり、C君は自分でも隙間時間にスマホで英文ニュースを読めるようになりました。
大学受験はメンタル面と継続性が課題になります。この年齢になるとご両親は、勉強内容はもちろん、勉強の進め方についても口出しできなくなります。「本来自分でできるはずの勉強」を僕と一緒に進めることで、安心して・地道に・王道の勉強を進められるように指導しています。